中央棟の図書室へこれから向かおうとしている紫音。
おそらく、そこにはあの先輩がいるだろう。

先輩の真意がわからないから、紫音を一人で行かすのはキケンな気がする。
噂通りの目的なら尚更。
例え、本気だとしても別の問題がある。

紫音には幸せになって欲しい。
私利私欲になんて巻き込まれてほしくない。


理事長の孫。
両親のカリスマ的存在。
そして先輩本人もファッションモデルとして注目を浴びてきている。


お兄が持っていたメンズブランドの雑誌の中で見つけたモデルとしての先輩。
本名や年令、職業などが全てシークレット。
先輩に対しての配慮なのか、本人が望んでいるのかはわからないけど、ベールで包まれていることもかえって魅力らしいから、案外事務所側の作戦なのかも。
紙面上での露出頻度が少ないのも人気を集めてる一つになってるみたいだし…


"やっかいな男(ヒト)に目をつけられたもんだわ…"


私が悶々とそんなことを考えていたら、紫音が声をかけてきた。

『碧?会議遅れるよ?』
「だーーーーっ、行きたくなーいっ」

今日に限ってまさかの生徒会臨時召集。
いや……事前に通達はあったけど…

昨日帰りがけに聞いたそれは、そのあとのことと、今朝からのことですっかり忘れてしまっていた私。

会長を務める私が、その責務を放棄することなんて出来るわけがなく、そんなことをしようものなら、間違いなく紫音に叱られる。

『何言ってんの?ほら、途中まで一緒に行こ?』

私の戯言など紫音はスルリとかわして、腕を絡めてくる。

「えーっっ…」

そんな可愛い行動の紫音がもっと見たくて、私はごねてみた。

『えーっじゃありません』


"叱ってても可愛い"


M的な思考の私。

『碧会長、頑張って下さい』


"チーンッ撃沈"


紫音のとびきりの笑顔が私を沈めた。

「うん、わかった。会議終わったら私も行くからね」
『ん』

中等部にあたる西校舎の3Fにある私達の教室を出て、私は2Fの生徒会室へ、紫音は中央棟4Fの図書室へ向かった。