そんな毎日が過ぎていくんだと思ってた。

十月

日も短くなり、だんだんと涼しくなってきた頃

キミは僕に向かって言った。

「ねえ、あたし……引っ越すんだ」

「……え」

引っ越す?

「いっ…いつ?」

辛うじて言えたのはその一言

「明日、かな?」

「そんな急な……」

明日?

会えるのは、あと……?

動揺していた僕にキミは笑顔で言う

「これまで、しつこかったよね。
ごめんね。でももう、引っ越すから、いなくなるから。
迷惑かけて……本当にごめんなさい……」

その笑顔は悲しげで

「じゃあ、もう帰るね。結構忙しくて」

「ピアノ、弾かないの?」

「うん、今日はこれ言いに来ただけだったから」

引き留めようとした言葉も意味が無くて

急ぎ足で音楽室を出て行くキミをただ呆然と見つめることしかできなかった。