「お父さん!早く急いで!!」
「わかっとるわい!!」
家まで急いで帰って、玄関を思いっ切り音を立てて開けた。

「お母さん!今日から佑都のところに行ってくるから!!」
2階の自分の部屋に置いてあるリュックを背負って叫ぶ。
「え、今日?!日向、検査結果は?!」
「…大丈夫!何ともないって!!」
うん。そうだよ。
私は大丈夫なんだから。
「そう…」
納得したのか、お母さんは静かになった。

「姉ちゃん」
「あ、怜!ただいま!」
「お帰り。もう行くの?」
「うん!みんな待ってるし!」
「…姉ちゃん」
「ん?」
「無理すんなよ」

急に声を変えて言うから。

あ、バレたなって。

「怜…」
「……」

知っていても、知らないフリをしてくれる怜。
気付いていても、気付かないフリをしてくれる怜。

「ごめん…」
「何が?」
「何でもない。行ってくるね」

ごめん。

「気を付けて」

我儘なお姉ちゃんでごめん。

泣きそうになる心を、必死になって堪えた。

「お母さん、行ってくるね」
「無茶はダメよ」
「わかってるよ」