さっき黒瀬から借りたばっかりのマフラーだ。


「……」

黒瀬の名前を出せず、思わず黙る。


「莉子ちゃん、もっかいきくけど、さっき誰のこと考えてたの?」


黒瀬のことを考えてた。
最低だ。私。


また涙がこぼれてしまう。

マコトくんはこんなに私を好いてくれているのに。

どうして…。


「泣くだけじゃわかんないよ?莉子ちゃん」


「…ごめんなさい」

「謝らないで。誰のこと考えてたの」

「…ごめんなさい…ごめんなさいっ」


私は謝って泣くばかり。



「黒瀬…だよね」

とマコトくん。


マコトくんを傷つけたいわけじゃないのに。

でも、傷つけないようにとしたことが全部。

彼を傷つけていることになっている。


「…ごめんなさい。マコトくん…」


「莉子ちゃん、自分の気持ちにとっくに気付いてるよね」


マコトくんは私から体を下ろすと、ベッドから降りてそう言った。