「ドゥーと仲良くしたいんじゃないかしら」
「お断りだね」
ふん、とドゥーが鼻をならして私に抱きつき直す。
と。
「そりゃーこっちのセリフだね」
私からはドゥーの影になり見えないけれど、チェシャの声がした。
そしてそれと同時にドゥーが震えた。
「ドゥー?」
なんだろう、と思ってドゥーを見上げると。
青かった顔がもっと青くなり、まるで死人のようだった。
そして少し視線を下げると。
ドゥーの細い首に長い指がかけられていた。
尖った爪から、それがチェシャの指であることに気がつき、慌てて声をかける。
「え、チェシャ……」
「アリスから離れろよ、ネズミ」
脅すような低い声は、いつものチェシャの声からは想像がつかないほどで。
ドゥーはゆっくり、ガクガクとぎこちない動きで私から離れた。
「よろしい」
完全に離れたのを見ると、チェシャはドゥーの首から手を離し、代わりに私を抱きしめた。
「あーあ。俺のアリスがネズミ臭くなった」
「失礼ね」
ぎゅーっと腕に力を込めたチェシャは、スリスリと私にすり寄ってきた。
さっきの怖さはどこへやら……。
というかこれでは猫じゃなくて犬みたいだ。
…本人に言ったら怒るから言わないけど。



