「今日こそアリスに遊んでもらおうと思ってさ〜?」
紫色の猫目に、ピンクに近い茶髪。
整った、男性の綺麗な顔が間近にあった。
「……………チェシャ」
「ん?」
「………………近い」
「近づいてるからね」
…そうじゃないんだけどな。
チェシャは、自分の長いしっぽで私の頬をなでると。
「じゃあ、離れたら遊んでくれる?」
と、楽しそうに笑った。
「………わかった」
ぽつりと了承すると、彼は意外と簡単に私から離れ、座っていた枝から降りた。
まだ眠いんだけどなぁ、と思いつつも私も枝から降りようと枝から足をぶら下げた。
すると、チェシャが抱き上げて降ろしてくれた。
「…ありがとう」
「どーいたしまして〜」
ケラケラと楽しそうにしているチェシャは、相変わらず何を考えているかわからない。
「………………で?」
「ん?」
「遊ぶって?」
私が髪を整えながら聞くと、チェシャは、あー、と耳を揺らした。
「特に決めてないからさ〜お散歩しながら見つけよーよ」
やっぱりか。
チェシャはいつも遊べ遊べ言うくせにそのメニューは決めていない。
気まぐれな猫そのものだ。
まぁいつもなので。
「えぇ、いいわ」
私はもう慣れっこだ。
まだ眠たい目を擦っていると、チロ、と瞼を舐められた。
猫なのはわかっているけど見た目は男性なのだから、やめて欲しい。
その意思を込めて顔を押し返すと、チェシャはクスリと笑ってしっぽを降った。
そんな彼に呆れながらも、私は彼に着いていく。
そして私たちふたりは、ふらふらと深い森の中を歩き始めた。



