「アリス」
また、誰かが私を呼んでいる。
「ねぇ、起きて、アリス」
頬に柔らかな温もりを感じる。
その温もりは、時々ふわふわと揺れていた。
「……もう少し…」
「ダメ。起きて。起きて遊ぼう」
起きたくない………。
「…………」
ひたすらに起きたくないと思っていると、つんつんと頬をつつかれた。
そして時々頬を引っ張られた。
「……………………」
「おーきーて」
私は目を開けるのが億劫で、気にせず眠ることにした。
つんつんつん。
「……………………………」
つんつん、ぐいー。
「起きてーって」
「…………………」
つんつん。
つんつんつんつんつつん。
「ねーーーー」
「あああーーもう!うるさい!!」
我慢ならなくて、目を開けて頬をつつくものをつかまえる。
それに目を移せば、頬をつついていたそれは人の指だった。
私のものよりも太く長い指。
「あ、おきた」
声のする方に目を向けると。
「…………チェシャ……!」
そこにはニコニコニヤニヤとした、猫耳を生やした青年が木の枝に座り込んでいた。



