「なんでもいいが、さっさと出ていけ。ついでに、出ていく前に奥の小屋からアイツらを連れていけ」






一気にまくし立てたアブソレムは、また水タバコをぷかり。





「えー、面倒事だけ押し付けかよ。マジでさ……」





イラッとしたらしいチェシャがアブソレムに喧嘩を売る前に口を挟む。





「アイツらって?」





ぷかりぷかり、アブソレムの口から吐き出される煙が、ときどき輪の形で出ては消えていく。





器用だなぁ。




そんなふうに感心していると、アブソレムは心底嫌そうに呟いた。







「トゥイードルの双子だ」








…………………これまた面倒なのが。







あぁ、なるほど、チェシャは鼻が敏感だから、面倒事ってわかったのか。






まぁ確かにこれは面倒事だ。







トゥイードルの双子………トゥイードル・ダムとトゥイードル・ディー。





何を隠そう、瓜二つの双子の青年なのだけど。





………………性格がとてつもなく厄介。








私はアイツらに1度絞殺されかけた。







それを知ってるのは当人達とチェシャなわけで。




チェシャはそれ以来双子とは仲が悪いようで。







「俺らの知ったことじゃないね。面倒ならほっとけばいいだろ。いこ?アリス」




けっ、とアブソレムに舌を出して、私の手を引いて森から出ようとするチェシャだけど。







「アイツらがいなくなれば小屋を使ってもいいと言ったんだがな」






というアブソレムのつぶやきにピシッと止まった。





ゆっくりアブソレムに顔を向けたチェシャの顔は、疑心に満ちている。





「んなこと言ったか?」





「つもりだったが、伝わらんかったか?」






これに関しては私はチェシャに賛同だ。




伝わるわけあるかアホぅ。




わかりづらすぎるわ。







「…………あー、そ。じゃあアイツら締め出したら俺らのモンってことね」






「やったつもりはないがな」





チェシャのにいっと笑った顔に呆れたようなアブソレム。






なんだこいつら。





頭おかしいんとちゃうか。






はぁ、と一つため息をついた瞬間、グイッと手を引かれた。






言わずもがなチェシャである。





そしてそのままズンズンと、先ほどとは逆方向に進んでいく。






待って待って待って!



私行くって言ってない!!






マジで嫌だから!







「私行きたくないわよ!?」





「つったってじゃないと2人になれないんだから仕方ないし?」





いやだから、私はなりたい訳じゃない。





「アイツらアンタのこと気に入ってるっぽいし、大丈夫じゃねーの」






ねぇ貴方忘れたの、私殺されかけてるんですけど?





なに、鳥頭なの、ねぇ?






そんな私のことなど知ったことじゃないチェシャはズンズンと足を進める。





それを後ろから見て、アブソレムは一言。






「扱いやすい猫だな」





と、煙をふかしたのだった。