「そう言われたって、私がこれを引きずっていけると思う?」
私の問いかけに、彼は本から目を離して。
どこからか取り出した水タバコをふかし始めた。
おい、答えろよ。
イライラッとしてアブソレムから視線を離すと、ボソッと声が聞こえた。
「………4%」
「は?」
何の数字よ?
と、私が問いかける前に、アブソレムが上半身を起こした。
「お前がそいつを連れて出ていける確率だ」
あぁ、そう。
てか、ひっく!
なんでそんな低くなった!
私でも五分五分かなーとか思ってたんですけど!?
そんな思考が伝わったのか、ふぅとタバコの煙を吐き出して。
「第1に、ここにお前が自ら来るとは考えづらい。そいつに引っぱられて来たのは明確だ。第2に、そいつが好きな女を無理やり引っ張るということは、それなりに何か考えがあるだろうから、それを覆すのは至難だろうな」
「丁寧ナ説明ドウモアリガトウ」
私が引き気味に棒読みでお礼を言うと、彼はもう1度タバコをふかして。
「間違ってるか?」
と、私の後ろにいるチェシャに問いかけた。
「んー……98点、かな?」
少し小馬鹿にしたような顔でアブソレムをみるチェシャは、どこか楽しそう。
「ほう?」
水タバコを口から話すことなく返事をするアブソレムは、これまたどこか楽しそう。
「なにか考え…ってのが減点。俺はただアリスと2人になりたいだけ」
チッチッチと舌を打ちながら指を立てて横に振る。
「やはりお前の思考はわからんな」
ふぅーとタバコをふかしている彼は、そう言って木から降りてきた。
降りるっつっても、ずるりと木からぶら下がった状態から手を離して降りるという、高身長を活かした降り方だった。
「どうでもいいが、二人になりたいのなら私の領域に入ってくるな」
あんたの領域=森でしょうが。
確実に森から出ていけと仰ってますね。
このイモムシめ。
「じゃあここ一帯の領地譲ってよ。今だけ」
「却下だな。以前そう言って森を荒らしたのは忘れていまい」
「あれ、そんなことあったっけ?」
チェシャはなんてことないように話してるけど、私にはわかるぞ。
耳がぴくぴくしてるってことは覚えてるよね。
覚えてて知らないふりしてるよね?



