私たちもそれに続いて歩き出す。






一応、彼女に頭を下げてから。






……全く見えてないと思うけどね。





彼女が我に帰った時何が起こるかは想像したくない。







「いやぁ困ったものだよねぇ。あぁなると長い時は2時間くらいあのままだからさ」





どんだけよ。




2時間笑ってられるってすごい腹筋。






呆れるしかないわ。






「ふふ、アリスは気に入られてるからね」






私の表情を見て、何を勘違いしたのか、ウサギがそう言って、とても楽しそうに目を細めた。







彼の形のいい唇がゆったりと笑を描いているのを見て、はたと気がつく。






さっき、ハッターのところでのこと。






あれ、三月兎が、白ウサギの薬が切れたっていていたような?






「ねぇ、白。あなたリンゴジュース……薬が切れたんじゃなかったの?」






私の問いかけに、彼は2度瞬きをして。





「あぁ、そうそう。君がどこにいるかわからなかったから、帽子屋さんに頼んだんだ」





よろしくね、そう言って笑ったけど、私が聞きたいのはそうじゃない。







「切れたはずなのに、どうして人型なの?」






そう、リンゴジュースもとい薬は、効力がなくなる前に、予兆というか、前フリが全くないらしく。





気がついたら動物に、というものである。







その問いかけに、ウサギはあぁとひとつ頷いて。





「帽子屋さんがくれたんだよ。三月兎のストック……とか言ってたかな」





ハッターが?





ストック…ということは予備か。





そんなもの作ったかしら?




大体、彼女は有効期限が長いからそんなもの無くてもいいのでは?






そう白ウサギに言うと。






「動物に戻ると三月兎がすねて暴れ出すらしいよ」





と、こともなげに言うけれど。





暴れ出す。







確かにあのウサギが暴れだしたらヤバイからなぁ。






1度だけ、彼女が暴れだしたのを見たことがある。






あれはまだ私が彼女を女と認識してない時のはず。






和やかに、いつもの通り狂ったお茶会の最中、ハッターが白ウサギの頭脳を褒めたのだ。






正確に言えば、悪知恵を。







女王の処刑から逃げ出すために私を引き合いに出そうという話を白ウサギがしていたのだ。







それに対してハッターが嫌味混じりに褒めたというか、まぁ完全に嫌味だったと記憶している。







しかし三月兎はそれを褒めたと捉えたようで。





いつも俺のことは馬鹿だ馬鹿だ言うくせになんだその扱いの差は!ウサギ差別だ!!





と。






馬鹿なんだから仕方なかろうとはハッターのセリフで、それを聞いて彼女の中の何かが切れた。







手に持っていたカップをハッター目掛けて投げるわ、椅子の上にあがってテーブルのお菓子を蹴飛ばすわ、ドゥー(まだ動物型)をポットに投げ入れるわ、ほかにも……まぁ散々。








私がなだめてもまったく効果なし、やっと収まったとき、彼女は疲れてその場でぶっ倒れて寝たくらいにカオス状態。







女王はヒステリーが過ぎると思っていたけれど、あの時の三月兎はその比ではなかった。






私はそれを思い出して苦い顔をしていた。