何言ってるの。





ねぇほんとに何言ってるの。






何言ってるんだこの猫はって思うことは多々あるけれど、今回はいつもの比じゃない。





なにしてくれてんの…!!



なんで自分で死亡フラグたてた。






首なくなるぞ。



え、どうするの、首なくなるよ?






それはいい、いやよくないけど。






ついでとか、私が連れてきたからとかで私の首までとんだらどうしてくれんの…!?







ダラダラと冷や汗が流れる。





汗をかいているのに体感温度は北極レベル。





ど、どうしよう……。






ちら、と女王様に視線を向けると。




「………」




彼女は何も言わず、すっと目を細めた。





…あぁ、終わった。





思えば短い人生だった……。






と、人間死ぬときは走馬灯が走るって言うなぁ、なんて焦りを通り越し、なんだかゆったりと考えていると。











「ふ、あっはははははは!!!」








鈴のような声が、ミスマッチなほどの笑い声をあげた。




驚いて、バッと顔を上げて女王様を見ると、彼女は机をタシタシと叩きながら目尻に涙を浮かべるほどに爆笑している。








「そうかそうか。なかなかに愉快なことを言う猫だ。はははっ!!」







爆笑、していらっしゃる。





………はい!?





なんで?今の何が面白いの?!







チェシャ、あなたのおかげで私の心中は絶賛混乱中だ。





今のアンタ変だよなという言葉がツボっている女王様。





彼女の笑いのツボに対しても混乱だし、何はともあれ首は繋がってられるのかしらと身の安全を確認中。




でももしここで口が滑ってしまえば、私の命ももはやないわけで。







どうしたものかしら、ととりあえず近くにいたチェシャに視線を向ける。






彼は、バケモノでも見てるような顔をして女王様を見ていた。






そして私の視線に気がついた彼は、席を立つと、私の元へ歩いてきて。




「行くよもう。なんなのこの人、ワケわかんな。変って言われて爆笑するとか神経疑うわ」





いや、女王様がいる目の前でそんなこと言えちゃうあなたの神経も疑うわよ?






というかそっちの方が大きいと思うの。






ていうか、女王様の許可なく立ち上がっていいの…?





退席とか1番怒るんじゃ…。




と、思ったけれど、未だに爆笑から戻ってこられない女王様は、そんな私たちに気がついていない。







え、これどうするべき…?




何か言ったら気持ちよく笑っているのを止めてしまうことになるし、だからと無言でいなくなるのも……。




悩んで頭がまたもやぐるぐるしている私のことはお構い無しに、チェシャは私の腕を掴んだ。



「ほら!」





そして強引に引っ張る。






その勢いに負けて立ち上がってしまう私。






すると、丁度いいタイミングで、いつの間にか消えていたウサギが戻って来た。





「あ、ご退席ですか?」






そう言ってふわりと笑ったウサギは、私たちと女王様の様子を見て、ひとつため息。






「なるほど。ご退席頂いて結構ですよ、この方はこうなるとしばらく周りをシャットダウンしてしまいますので」





そう言いつつ、女王様の前に行くと、ウサギは持ってきていた手のひらサイズの包みを彼女の前に置いた。





そして、私たちを振り返り。






「じゃあ、僕が外まで送っていくよ。ここは迷路みたいだしね」





と、肩をすくめて歩き出した。