「そう言わず。あぁ、猫はアリスといたいんだね」
「そー」
「なら、君も一緒でもいい。頼むよ、アリス。いいだろう?」
「はぁ?」
良くないかな。
断じてこれっぽっちも良くないかな。
だって何か口走ったら私の首が身体と離れるもの。
私まだギロチンのお世話にはなりたくない。
ていうか一生お世話になりたくない。
「女王は君のことは気に入ってるから大丈夫。それに首なんか跳ねないから。滅多には」
滅多には、って言ったな。
つまり滅多なことがあったら跳ねるんだな。
「お断りさせ」
「よし、決まったら早速行こう!早く行かないと僕の部下が首だけになってしまう」
そういうなり私の右手を掴んで庭園の中へ。
離してくれと切実に思うわ。
ていうかね、1つ聞きたいの。
ねぇアンタの部下何したの。
そんな疑問が顔にでていたのだろうか、それともコイツが話したかったのか。
「いやぁ、実はね。今日料理番だった部下なんだけど。昨日は女王、おやつにタルトを所望だったんだけど、今日になって急にブリオッシュがいいって言い出して」
ははは、と笑いながら話しているウサギ。
まぁこれだけ聞いたら普通というか、少しわがままなお姫様って感じだけど。
「で、伝達ミスがあって、おやつの時間に女王の前に出されたのはタルトでね。女王様怒っちゃってさ〜『こんな簡単な命令すら聞けんのか!首を飛ばせ!』って」
いやぁ参ったよねぇ、と言って笑ってくれるのはいいけどね。
それだけで飛ばされるんですよ、行きたくないよ私。
ふと後ろを振り返ると、チェシャが鬱々とした顔で着いてきていた。
あら、チェシャ?
「一緒に来てくれるの?」
いつもなら何があってもお城には入らないのに。
私がチェシャに小声で聞くと。
「気が立ってるヒステリーのとこにアンタ放り出せないでしょ。それについてったら、なんかあったとき、俺が抱えて逃げられるし」
と、ニヒルな笑顔を浮かべて言った。
どうしてかわからないけど、それを聞いて、少しだけ胸がきゅっとなった。



