旅館に到着した三人は受付へと向かったが、ここで、大変な事態が起きてしまった。


 美佐の部屋の予約が出来ていなかったのだ。旅館側の手違いでコテージ一つだけの予約になっていた。


「申し訳ありません。本日は満室になっておりまして、明後日になりませんと部屋に空きが出来ません。」


 夏休みの旅行客ならいざ知らず、季節外れの避暑地にどれ程の客が押し寄せてくるのか?と、優也は信じられなかった。


 すると、近くで地元のお祭りがあるそうで、花火が上がる明日の夜に合わせて部屋が満室になったそうだ。



「それじゃあ、二晩はお母さんと一緒なのね!嬉しい!」


「ああ、ご家族のご宿泊でしたらコテージは広い上に和室とベッドのある洋室と二間御座いますのでゆっくり寛げますよ。お庭がとても素敵な遊歩道に繋がっていますのでお嬢様にもご両親にもお気に召して頂けるかとも思います。」


 受付の対応に不満あるものの、茜は母親と久しぶりにゆっくりした時間を一緒に過ごせ喜んでいた。けれど、優也も美佐も「ご両親」という受付の言葉にかなり敏感に反応していた。


 優也と美佐が夫婦でその子どもが茜の様に受け取られていたのだろう。そんな目で見られることに違和感を覚えた美佐はかなり気まずそうな表情をしていた。