「じゃあ、俺はね、味噌汁が食べたい。茜は?」

「味噌汁ならお魚がいいわ。」

「煮魚?それとも焼き魚?」

「どっちでも。お母さんは良く焼き魚を作ってくれたの。それが一番好き!」



 茜は母親の美佐がよく作ってくれていた干し物などの魚を焼いたものが好きで良く食べていた。それを思い出していると母親って凄いなぁって感心してしまった。


 何も言わなくても娘の好きな料理をいつも作ってくれていた。そして、美味しいって言ってくれるからと毎日料理を作ってくれていた。


 朝、目を覚ませば美味しそうなお味噌汁の匂いが部屋まで漂って来ては食欲をそそり、朝からしっかりご飯を食べて学校へ出かけて行った。学校から帰れば、茜の好きな料理が早く食べてくれと言わんばかりの顔をしてテーブルの上に並んでいた。


 普通の家庭料理ばかりが食卓の上にならんでいたけれど、美佐が作る家庭料理はどれも茜にとってはご馳走だった。そんな料理を当たり前のように食べていた茜は母の存在がどれほどのものか思い知ってしまった。



「どうした?」


 いきなり黙り込んでしまった茜をチラリと横目で見ていた優也は、茜が寂しそうな表情をしている事に気付くと路肩へと車を停めた。


 目に少し涙を浮かべていた茜を見て優也は何か言ってはいけない事を言ったのだろうかと少し心配した。