数日前、俺は葉村理久に会いに行った。

彼は俺を姿を見ても不思議と驚かず、むしろ幽霊の生態に興味津々という感じだった。

言う必要のない能力の説明までしてから例の作戦について切り出すと、彼はなぜかほっとしたように笑っていた。


『……それが本当なら、願ったりかなったりだ。ありがとう。ええと……』

『俺は、ルカ』

『そっか。ありがとう、ルカ。じゃあ、また十四日に』

『ああ』


ここまですんなりことが運ぶとは思っていなかったから、なんだか拍子抜けしたような気分だ。

でも、お互いの利害が一致していると思えば、俺の罪悪感や迷いも少しは晴れた。



「……さて」



そして迎えた、二月十四日の午後。俺は、葉村と落ち合う場所に決めていた北高の屋上に降り立った。

雪が地上に存在してくれるかどうかだけ心配だったけど、一昨日降った雪がところどころ残っていたから、なんとか俺はここにいられる。

ただ、今日は朝から陽射しがあたたかく、もって数時間……という、ぎりぎりのところ。


(早く来いよ、葉村……)


屋上の手すりに背中をもたれさせ、ぼんやりと彼を待つ。

下校時間を知らせるチャイムは数分前に鳴っていたから、もう間もなくだろう。


(あつ……)


普段から雪に慣れているせいか、冬の陽射しであってもいやに眩しく、不快感を覚えた。

そして、こんなに太陽を浴びても屋上の床に自分の影ができないことに一瞬傷つき、そしてすぐにこう思い直す。


(もうすぐ、生身の人間になれるんだから……影だってすぐにできるさ)