「たとえ誘われても、アイツのいる世界に行くのだけはダメだよ。俺だって、ずっとアイツといられれば、そりゃ嬉しいけど……それとこれとは全然別次元の話だ。佐々木さんがこっちからいなくなったら、何人が悲しむ? ……少なくとも俺は、友達をなくすのはもうゴメンだよ」

「山野くん……」


寂し気な笑顔で語った彼の胸の痛みが伝わり、迷っていた心が落ち着きを取り戻していく。

ルカという大事な友達ををなくした経験のある彼だからこそ、きっと言ってくれるんだ。

それに、知り合ったばかりの私のこと、友達だと言ってくれるなんて……ルカが彼と知り合ってから明るくなった理由がわかる気がする。


「それに俺、持田の親見て、思い知らされたんだ。親より先に死ぬなんて、史上最悪の親不孝だって。自分の親があんな顔すると思ったら、耐えらんねぇよ。……だから、佐々木さんも、変な事考えるのはやめて。たとえアイツのことが好きでも」


そう、だよね……。

友達、親、それに、塾の……須藤先生だって、私がいなくなったら、きっと悲しむ。煩わしいくらいに熱い心で、ルカが好きになった私のことまで心配してくれる人だから。

それに……。

私は数歩先にいる山野くんのもとに近づき、彼の目をまっすぐに見て告げる。