一瞬変な間があって、でもすぐにどちらからともなく堪えきれなくなったように吹き出した。
しばらくくすくす笑っていた山野くんは、目の端に涙をにじませながら私に告げる。
「持田も須藤のハト胸具合いつも気になってたみたいだからさ、佐々木さんと気が合いそうとか思ったらしく、その日からきみを目で追うようになって、名前が知りたいとかいう欲求も出てきてさ……ちなみにコレ、持田にとってはすごい進歩。アイツヘタレだったからさ」
いつかの模試で、こっそり後ろから私の名前を覗こうとしたら、佐々木菜子の“木菜子”しか見えなくて、私を“キナコ”と呼ぶようになったらしい。
ずっと気になっていた“キナコ”の由来が明らかになって、なんだか恥ずかしいようなくすぐったいような気分になる。
(ルカは、本当にずっと、私を見ていたんだ……)
ルカの一途な想いを改めて知り、胸がじんわり熱をもつ。
そして何故だか、昨夜の苺チョコレート味のキスを思い出してしまい、そのときのドキドキが舞い戻ってきた。
(なんか、溶けちゃいそう、だった……でも、胸が痛くて……苦しくて)
「……佐々木さん?」
「え、あ、ごめん。何の話だっけ……」
「いや、持田の話はだいたいしたけど……なんか顔赤いよ? 熱でもあるんじゃ」
「へ、平気! ありがとう。いろいろ教えてくれて」
火照った頬を冷ますためにお茶を一気飲みして、それから手でぱたぱたとあおぐ。
そんな私をじっと見ていた山野くんは、怪訝な表情をしながら口を開く。
「もしかして、さ。持田……つーか、今のアイツはルカだっけ。まあどっちでもいいけど、佐々木さん、惚れてるんじゃ……?」
「え……?」

