山野くんは意表を突かれたように目をぱちくりさせていたけど、すぐに「もちろん」と笑顔で頷いてくれた。

それから廊下の窓に近づいて、外に呼びかけるように少し大きな声を出した。


「おーい、持田、喜べ! 佐々木さんがお前のこと知りたがってるぞ!」


ルカに話しかけたつもりなのかもしれないけれど、辺りはしん、と静まり返っていて、返事が返ってくる様子はない。


「おっかしーな。アイツ、雪があれば会えるんじゃなかったっけ?」

「……そういえばそうだね」


窓の外には、昨日の夜に降った雪がまだ残っている。

道路のほうはだいぶ解けてしまったけど、建物の屋根や誰にも踏まれていない歩道の植え込みは、まだ白い雪に覆われている。


(ルカ……もしかして、葉村くんのこと、調べてくれてるのかな)


ゆうべ、どうしてかうちのキッチンに現れた彼は、葉村くんの夏休みに何があったのか、探ってくれると言っていた。

昨日の今日で行動を起こしているとは限らないけれど、こうして一番の友達である山野くんが呼びかけても現れないということは、何か大事な用があるんだろう。


「じゃーとりあえず出よっか。こないだの店でいい?」

「うん、大丈夫」


私たちは塾を出ると、以前もそこでルカの話をしたファストフード店に向かって歩き出した。