「俺が……探ろうか? 夏休み中、その“葉村くん”の身に何があったのか」

「ルカ……そんなこと、できるの?」

「まぁね。幽霊に不可能はない」


わざとらしく指でピースを作ってみせると、キナコはほっとしたように微笑んでくれた。


「ルカなら……彼の気持ちも、わかるもんね。たまに、本当に羨ましくなるよ、その能力」

「そう? まぁ、聴こえないよりは聴こえた方が便利かもね」


そう言って軽く受け流したけれど、俺は心底キナコにこの能力がなくてよかったと思っていた。

俺の気持ちの全部が覗かれたら、キナコは俺から離れてく。

きっと嫌われるなんてもんじゃない。軽蔑される……完全に。


「でもさ、キナコ」


俺は彼女の目線にかがみ、両手を取って言い聞かせる。


「俺は……心の声じゃなくて、その口から聞きたい。いつか、ちゃんと俺を好きになってくれたら、その気持ちを」

「ルカ……」


うっすらと涙の膜が張った綺麗な瞳が鏡のように俺を映していて、本心が見透かされやしないかと焦った俺は、さりげなく視線を手元に移して、握っていた小さな手を優しくさする。


「冷たいね、手。……ごめん、こんな時間に長居して。俺は、キナコからもらえるチョコならたとえ失敗作でもうれしいから、練習はほどほどにして早く寝な?」

「……うん。練習は、もうちょっとしたいけど……今日は寒いから寝るよ」

「いい子いい子。じゃあ、俺行くね」