俺はチョコのついた指をもう自分の口で拭ってから、一瞬だけキナコの身体を解放して、それからすぐに肩をつかんで自分の方を向かせた。
「……ホントに、美味しいから。食べてみ?」
そして目を閉じると、キナコの小さな唇に自分のそれを重ねた。
それから、扉をノックするように舌で唇をつつくと、キナコはゆるりとそこを開いて、そこに侵入することを許してくれた。
「――ん、っ」
苺チョコレート味の、甘い甘いキス。
徐々に体の力が抜けていくキナコは、腰をシンクに寄りかからせ、両手は俺の服をつかんでなんとか立っているような感じだ。
うっすらと瞳を開けてその表情を見ると、苦しそうであるのと同時に、甘くとろけそうな顔にも見える。
(俺のキスで、そんな風になってくれてる――って、思っていいの?)
ちゅ。ちゅ、と音を立てて唇を啄むと、まるでその疑問に答えるかのように、キナコの気持ちが胸の中に流れ込んできた。
(……私。ルカのこと……好きに、なってる……? じゃなきゃ、こんなキス……)
それが聴こえた瞬間、全身に電流が走ったようにうれしくて、俺は思わずキスを中断すると、キナコの顔を正面から見つめて問いかける。
「俺のこと……好き?」
「……! も、もしかして、また勝手に私の気持ち……っ!」
「答えてよ、キナコ。……俺は好きだよ。だから、死んでも死にきれなくて、こうして会いに来てるんだ」
こんな聞き方は、脅迫みたいだろうか。
でも、それほどにきみが好きなんだと、どうしても伝えたかった。
キナコがもしも同じ気持ちでいてくれるなら、俺は……。

