「キーナコ、なにしてんの」

「いやぁぁぁ、で、出たぁっ!」


からかってやろうと両手をポンと肩に置くと、即座に耳をつんざくような悲鳴が響き渡り、思わずキナコの口を手のひらでふさいで口元に人差し指を立てる。

振り向いたキナコは目を見開いてびっくりしていて、俺は苦笑しながら「驚かしてゴメンね」と謝り、彼女の口から手を離した。


「な、なんで、うちに……?」

「ん? こんな時間だけど、キナコに会いたくなっちゃったから来た」

「答えになってないよ……」


ぼそぼそと不満そうに言いながら、けれどキナコも気づいたようだった。

台所の小さな窓をそっと開けて外を覗くと、納得したようにうなずく。


「どうも寒いと思った」


そう呟いて、細く開けた窓から入ってくる冷気に身体を震わせ、ぴしゃりと窓を閉める。

それから俺の方に向き直ったキナコだけど、ふと台所の状態に目をやると途端に慌て出して、出ている器具を片付け始める。


(これはルカに見られたくない……!)


ガシャンガシャンと大きな音を立てて片付けているのは、ただ慌てているからなのか、心の声を聴かれたくないからなのか。


(まあ、聴こえてるけどね。でも、見られたくないってなんで……)