「……雪、ぜんっぜん降らないなぁ」

「仕方ないだろう。少しの辛抱だ」

「……くそ。このタイミングでキナコが葉村理久と話しちゃうなんて」


スノウツリーの根元で、俺はキョウさんと下界を見下ろしながら、悔しさに歯噛みしていた。

このところ雪が降らず、一週間もキナコに会いに行けない日が続いていて、ただでさえやきもきしていたところに、予想外の閉じ込め事件で二人が接近してしまった。


「……でも、彼女はときどき空を見てお前のことを考えている。脈は充分あるだろう」


キョウさんは冷静にそう分析して、俺を励ましてくれる。


「そう……だといいんですけど」

「少しでも可能性があるんだ。早く例の作戦を決行して、彼女の心を強引に手に入れてしまえばいい」

「……作戦」


そうだ……俺は、その作戦をなんとしてでも成功させなければいけないんだ。

うまくいけば、一度は死んだ俺が、誰にも怪しまれることなくずっと下界にいられる。

ただ……それには、大きな犠牲も必要なのだけれど。


「まだ悩んでいるのか? ……でも俺のようになりたくなければ、心を鬼にするしかない」

「キョウさんのように……」