巻き込まれたことは、全然構わない。

もちろんびっくりしたし、このまま出られなくなったらどうしようって怖くもなったけど、こうして葉村くんと話すことができて、彼の考えていることが少しだけでも分かってよかった。


「ううん、私は、大丈夫だよ」

「……ありがとう。でもさ、佐々木さん」


そこで言葉を切って、言いにくそうに視線をさまよわせる葉村くん。

彼はしばらく何かを考えていたけれど、やがて決心したように私を見据えて言った。


「好きでもないヤツに、優しくしたら、ダメだよ」

「え……?」


葉村くんの口から飛び出した言葉が意外で、ドキッと心臓が跳ねる。


「僕……ずっと勘違いしてたんだ。佐々木さんが僕を気にしてくれるのは、もしかしたら好意があるからなんじゃないかって。……でも、佐々木さんには彼氏いるよね」


彼氏……? そんなの、いないけど。

首を傾げると、葉村くんは困ったように目尻を下げた。


「いいよ、ごまかさなくて。何度か見たことあるんだ。他校の人と仲良さそうに歩いてるところ」


他校って……もしかして、ルカのこと?

もちろん彼氏ではないけれど、友達……とも違う。

この間はキスだってしてしまったし、なんて説明するのが的確なんだろう。