「……その、葉村ってやつを好きでいるのがつらいなら、俺にすればいいじゃん」


そのとき、ふいに静寂を破ったのは、強い口調で放たれた、ルカのそんな言葉。


「え……?」


隣にいる彼を見上げると、ふざけた様子は少しもなく、熱いまなざしで私をとらえた。


「俺は、死ぬ前も死んだ後も、ずっとキナコのことが好きなんだ。だからこうしてここにいて、これからもずっとそばにいたいと思ってる」

「ルカ……」


真剣な告白にきゅ、と胸が締め付けられて、私は思わず着ているコートの胸元をつかむ。

ルカのことは、嫌いじゃない。ときどき遠慮がなくてムッとするけど、一緒にいて苦痛だとは思わないし、つかみどころのない彼の言動にドキドキしてしまうこともある。

瞳の色も髪の色も薄い、はかなげな容姿は素直にカッコいいし、ルカのこと、もっとちゃんと知っていきたいという気持ちもあるけど……。


「私……」


この間、ルカと相合傘しているところを葉村くんに見られたとき、ショックだった。

誤解しないでほしいって、心の中で叫んでた。

かといって、葉村くんに自分から話しかけたりはできないし、もう出所すらわからなくなっているクラス全体の悪意から彼を守ることもできない、無力な私。

そんな私に、彼を好きでいる権利なんてきっとない。

それはわかっているのに……葉村くんへの気持ちは、いつまでたっても消えてなくならなくて。

こんな中途半端な気持ちで、ほかの男の子からの告白に応えることなんてできないよ。


「……ごめん、ルカ」


絞りだすようにしてそれだけ呟くと、ルカはため息をついた。