「そういや、今日はあの傘じゃないんだ」
「だって、今日は降ると思わなかったから……この折り畳みはいつもカバンの中に入れてるやつなの」
「なんだ、そっかー。でも、傘がちっちゃいおかげで、いつもよりキナコとくっつけて俺はうれしいけどね」
……こういう発言は、無視するに限る。
内心動揺しているのを隠し、しれっと進行方向だけを見つめて歩いていると、急にルカが質問を投げかけてきた。
「キナコはやっぱり……あの、いじめられてる男子のことが好きなんだよね?」
思わずぴたりと足が止まって、心の傷口がじくじくと痛みだす感覚がした。
(聞かなくても知ってるくせに……葉村くんを好きって気持ちも、それを表に出せないことも)
ずっとくすぶっているだけの気持ちなのだからいっそなくなればいいのに、学校に行けば葉村くんのことが気になってしまう。
そんなに気になるんだったら、堂々と彼をいじめから救えたらいいのに、いつまでもそれができない自分を嫌いになっていくばかりの、負のループ。
そこからいつかは抜け出したいと思うのに、なかなか実行に移せない。
(結局、私は自分の立場が危うくなるのが怖いんだ……)
いつも目を背けているそんな本心を改めて思い知らされ、私は情けなさから唇を噛んでうつむいた。

