持田遥くんは私に片思いをしていて、でも、生きているうちに何も行動できなかったから、ルカとしてこうして私の近くにいられる今が幸せ。そういうことだよね。
(……なんだか、改めて考えるとすごく恥ずかしいことを言われている気が)
男の子からそんな直球に好意を向けられることなんて初めてで、徐々に顔が熱くなるのを感じる。
「あ、キナコが照れた」
「だから、心を覗くのやめてよ」
「いやいや、覗くまでもなく顔見ればすぐわかるって」
からかうように言われると余計に腹が立ち、私はぷいとそっぽを向く。
「それと……さっき心配してたみたいだけど、春が来ても俺は大丈夫。雪が解けてもキナコのそばにいられる方法、ちゃんと考えてあるから」
……それってどんな方法なんだろう。
視線の先、窓の外に降りしきる雪を眺めて、うーんと考える。
「今シーズンの雪を冷凍保存しておいて、次の冬まで大事に取っておく……とか?」
「はは、まぁそれでも可能かもしれないけど、もっと確実な方法があるんだ。キナコには内緒だけどね」
「なんで内緒なの」
いつも大事なことは教えてくれないんだから……。そんな不満を向けるようにルカを睨むと、その視線から逃れるように壁の時計を見上げて、ルカは忙しなく立ち上がる。
「もうこんな時間だ。帰ろ?」
話をはぐらかしたいのがバレバレのわざとらしい笑顔。
なんだか腑に落ちないけれど、私も仕方なく立ち上がって、ルカと一緒に店を出た。
バッグから出した折り畳み傘を開くと、ルカがさりげなく私の手からそれを受け取り、二人の間に差す。

