「どうして……」
山野くんはきっと、ルカとしての彼を見るのは初めてなのであろう。驚愕の表情でそれだけ呟くと、口を開けて固まってしまう。
「どうしてって……ほら、雪、降ってきたから」
ルカが指さした窓の向こうには、白い花びらにも似た、無数の雪が舞い始めていた。
そういえば……ルカが現れる日は、決まって雪の日だ。一度晴れの日もあったけれど、前日積もった雪が残っていた朝だったし……。
『俺、雪とオトモダチなの』
確か、この間一緒に帰ったとき、ルカは雪のシャワーを浴びながら、寒さなんて微塵も感じていない様子でそう言っていたっけ。
「……い、意味がわかんねぇ。お前、本当に持田なのか?」
「うーんと、ね。それは少し違う。持田遥はもういない。俺はルカだよ」
ルカは山野くんにそう告げてにこりと微笑むけれど、言われた本人は余計に混乱して首を捻っている。
「その、違いって……?」
私もルカの言っていることはなかなか理解しにくくて、思わず口をはさんだ。
ルカは山野くんのとなりにあった椅子をカタンと引いて、テーブルに身を乗り出すようにして座ると、微妙な笑みを浮かべる。
「それは秘密。まあ、ルカであるほうが俺は楽しいし、人生……って、死んでる俺が使う言葉じゃないけど、毎日が充実してるって感じかな」

