「それでも最近、やっと持田がいないって事実を受け止められるようになってきたんだけどさ……昨日、急に夢に出てきた持田が言うんだ。“なあ山野、俺、キナコと話せるようになったんだ、すごいだろ”って。あ、キナコっつーのは、佐々木さんのあだ名?みたいのを持田が勝手につけたんだけどさ」
(キナコって……! じゃあ、やっぱり……)
ぐ、と胸に何かがこみ上げる。でも、涙は寸前でこらえた。
「ただの夢とはいえ、それ聞いたら、とにかく持田の気持ちだけでも佐々木さんに伝えておこうって思ってさ……アイツ、ほんと好きだったから、きみのこと。って、もう、今更もいいとこなんだけど」
そう言って、ははっと笑った山野くん。
彼は私と話してスッキリしたのかもしれないけど、言われた方はどうすればいいの?
……つい最近知り合った男の子が、一年も前に亡くなっていた。
ちゃんと見えていて、ちゃんと話ができて、身体にだって、触れられるのに。
(つまり、ルカは幽霊なの? だから、突然消えたり現れたり、私の気持ちが聴こえたりするの?)
不可解なことがありすぎて、頭の中がパニックだ。
「あーあ、もうバレちゃった」
その時、突然私たちのテーブルの近づいてきた人物が、がっかりしたように呟いた。
聞き覚えのある声、それに山野くんと同じ制服。
「久しぶり、山野。キナコも、ちょっとだけ久しぶり」
ふわりと茶色の髪を揺らして私たちに微笑みかけてきたのは、紛れもなくルカだった。

