「それで……ちょうど一年前の今日、俺、持田をけしかけたんだ。“いい加減なんか行動しろよ”って。そしたらアイツ、“じゃあ告白する”って極端なこと言いだして、塾のあと佐々木さんのこと追いかけてって」


私は、遥くんのその決心のことはもちろん知らない。だって、一年前の今日、私はその遥くんに会った記憶がないもの。


「でも……私、会ってないよ? 途中で引き返しちゃったとか?」


素朴な疑問を口にすると、山野くんは寂し気に目を伏せて、静かに首を横に振った。

そうして彼が明かした事実は、予想もしていないものだった。



「その日、すげぇ雪が降って……この辺りも十センチくらい積もってさ。持田、交差点で横断歩道を渡ってるときに、スリップした車にはねられて、死んだんだ」



言葉をなくす私に、山野くんはうつむいたまま話す。


「頭打って、即死だったって。だから、痛い思いはしなくて済んでよかったって……持田の家に線香あげに行ったとき、アイツのお母さん、泣きながら言ってた。……でも、俺のほうがもっと泣いてたから、励まそうと思ったのかわかんないけど、無理して笑顔作ろうとしてて……それが、すげぇつらくて」


当時のことを思い出してしまうのか、ときどき言葉を詰まらせる山野くん。

痛いくらいに彼の悲しみが伝わってきて、なんて声をかけたらいいのかわからない。

それに、彼の話が本当なら、遥くんは私に会いに来る途中で事故に遭ってしまったということ。
そう思うと、やるせない胸の痛みが私を襲う。

でも……持田遥くんは、本当にルカなのだろうか。

さっきまで、きっとそうだと確信にも似た気持ちを抱いていたのに、今はその予想が、当たっていなければいいと思う。

ルカは確かに不思議な能力を持っているけれど、ちゃんと生きている人でしょ……?

今すぐここに現れて、私の気持ちを勝手に読んで、“当たり前じゃん”って、笑ってほしい。