たとえ週末をはさんでも、葉村くんに対するいじめはリセットされない。


「葉村ぁ、コレよろしく!」

「俺のも」

「じゃあ俺のも」


次の授業のための移動中、男子たちが葉村くんの手に、自分たちの教科書や筆記用具を無理やり持たせて手ぶらで先に行ってしまう。

葉村くんは男子の中では小柄な方で、たくさんの荷物を持たされてよろける姿に、思わず手を差し伸べたくなる。

……実際は、ずきずきと胸を痛めながら、見て見ぬふりをしてしまうのだけど。


「――ねえ菜子、今日の放課後ヒマ?」


そのとき、一緒に廊下を歩いていたクラスメイトの早苗(さなえ)に話しかけられ、私は我に返る。

ショートヘアがよく似合う小顔美人の早苗とは、クラスで一番仲が良くて一緒にいることが多い。


「……ゴメン、今日、塾なの」

「なんだーそっか。ちょっとゆっくり聞いてほしい話あったんだけどな」

「どうしたの? 何かあった?」


悩み事かな、と心配になって聞いてみると、早苗はあさっての方向を見ながらぽりぽりと頭をかく。


「いや、なんていうか……カレシ、できた、みたいな?」

「えっ! すごい! おめでとう!」