瞳を潤ませる私の頭を、ルカがぽんぽんと撫でながら話す。
「これも信じてもらえないかもしれないけど、俺を知る人たち、家族はもちろん、友達とか、学校の先生とか……そういう人の記憶も操作されるから、いきなり家に帰っても平気なんだってさ。本当なのか俺もちょっと怖いんだけど」
「……それ、本当? だとしたら、須藤先生の記憶は、操作されてなかったよ? さっき、ルカのこと話していたの」
「ああ、それなら平気。記憶の書き換えは、これから……キナコにまた“鍵”をもらったら、神様がしてくれるはずだから」
「鍵……?」
「うん。……あのときと、同じだよ。その鍵があれば、俺はこの世界に受け入れてもらえる」
それはきっと、あの時伝えたルカへの気持ち。
もう二度と、この言葉を伝えることはできないと思っていたけれど……。
私は笑顔を作って、はっきりと口にする。
「……好きだよ、ルカ。ずっと会いたかった」
「うん。……俺も」
ぎゅっと抱きしめられて、改めて再会のよろこびに浸る。
これからは、一緒に生きていけるんだ。
胸の奥から湧き上がる幸せに、震えてしまいそう。
「でも……須藤に声かけられたのはやっぱびびったな。なんとか逃げたけど、蘇ったばっかの心臓ばくばくして」
「……完全によみがえったなら別にコソコソしなくてもいいんじゃないの? 記憶だって、書き換えられるんでしょ?」
「まあそうだけど。……好きな女の子にプレゼント買ってるとこって、見られたくないじゃん?」
……プレゼント?
きょとんとする私をクスッと笑ったルカが、ズボンのポケットをごそごそと漁って、何か手にした。
そして「よっ」言いながら私の首の後ろに手を回して、そこでかちりと金具を留める音がした。
胸元に、ひんやりとした金属の感触が触れる。
それは、雪の結晶のチャームがついた、可愛らしいネックレスだった。