【キナコへ 雪だるまにキスしてみて?】
カードに書かれているのは、ただ、それだけ。
差出人の名前は書いていない。
だけど、胸がざわざわと乱れた。
だって、私をキナコと呼ぶのなんて、ルカくらいしか――。
雪ダルマの正面にしゃがんで、両手のなかにおさまるサイズの小さな体を、そっと持ち上げる。
どんぐりが五個くらい連なって弧を描いている口の、いったいどこにキスすればいいっていうんだろう。
少しの間悩んで、真ん中のどんぐりに、そっと唇をつける。
すると、ぼふっ!と音を立てて、雪だるまが爆発したように崩れて散らばる。
驚いてぎゅっと目を閉じた私が、おそるおそるまぶたを開いて、次に見たものは――。
「ル――」
「……ひさしぶり、キナコ」
白い雪の塊を頭に乗せ、のんきな笑顔を浮かべているのは、紛れもなく……ルカだ。
なにこれ……? 自分に都合のいい夢?
思わず手の甲をつねってみるけれど、普通に痛い。
「本当に、ルカ……なの?」
信じられずに尋ねてみると、彼はうーんと首を捻った。
それから、いつかとまったく逆のことを言う。
「今は……遥かな。持田遥」
「……どういう意味?」
ルカがもともと彼だっていうことは、私だって重々承知している。
でも、今の彼は“ルカ”でしょう?

