ルカは、心の中を読むことができた。

でも、ルカに見えていた、聞こえていたのはきっと、ほんの一部分だったんじゃないかって、彼がいなくなってから思うようになった。

……人の心は、とても複雑。

思ってもないことを口走ってしまったり、気持ちと逆の行動をしたり。

ときには自分自身をだますために、心が嘘をつくことだってある。

私はその仕組みを、勉強してみたい。

ルカのような能力がなくても、人の心を理解する術は、きっとあるはず。


「だから……“心のスペシャリスト”になりたいと思ったわけか。いいだろう、そういうきっかけなら、何も問題はない」


須藤先生は組んでいた腕をほどいて、私に頼もしい笑顔を向ける。


「信じてくれるんですか? 持田くんのこと……」

「ああ。……実は、今日ここへ出勤してくる途中に持田によく似た学生を見かけてな」

「え……?」


先生の言葉に、驚きを隠せない。

ルカによく似た学生……? きっと、人違いだよね。だって、ルカはもう二度と地上へは――。


「思わず駆け寄って、“持田なのか?”と声を掛けたんだ。そしたら、その学生は驚いてどこかへ逃げてしまった。……しかしあれはやはり持田だったような気がするんだ。佐々木が持田の幽霊と過ごしたことがあるなら、なおさら――」

「せ、先生! それ、どこですか!」


ガタンと立ち上がった私を見て呆気にとられる須藤先生。

でも、私の切実な様子に何かを感じ取ってくれたのか、彼はルカを見たという場所を教えてくれた。