「いつから、聴こえるようになったの?」


もし自分に、ある日突然そんな能力が与えられたら、“人の気持ちがわかるって便利だな”なんてすぐに順応できるとは思えない。

ルカだって、慣れるまでに時間がかかったんじゃないかな。


「うーん。約一年前……かな」

「一年前……何かきっかけがあったの?」

「うん、あった。……内容は、企業秘密だけど」


冗談っぽく言って、少し傘を後ろに傾けたルカが上空を見上げる。


(きっかけは教えてくれないんだ。まあ、別にすごく知りたいっていうわけでもないからいいけど)


隣のルカは上を向いたままで、前髪や鼻の頭にふわりと雪が乗る感触を楽しんでいるみたい。まるで温かいシャワーでも浴びているかのように、気持ちよさそうに目を細めている。


「濡れちゃうよ?」

「平気。俺、雪とオトモダチなの」


ニコッと微笑んだルカは、確かに雪が降る今の景色によく馴染んでいて、男の子なのに綺麗っていう表現が似合う気がした。


「……さっき、聞きそびれちゃったけど。どうして最近よく私の近くに現れるの?」


私の問いかけに、ルカは傘をもとの位置に戻してこう答える。


「最近……ってわけでもないよ。俺はずっとキナコを見てたんだ。それこそ、一年以上前から」

「え……? どこで会ったんだっけ……」