「ん……」


身体の半分が妙にひんやりして目を覚ますと、私は雪の上にいた。


「なにこれ……」


まるで高跳びの競技で使われるマットのように、分厚く積もった雪。

降ったばかりのようにふわりとさわり心地のいいその感触を確かめながら、自分の身に何が起きたのか思い返す。

私たち、屋上から……咄嗟のこととはいえ、なんて怖いことをしたんだろう。


(……そうだ。葉村くん、それにルカは……?)


慌てて周囲をキョロキョロ見回す。

すると、私と同じ雪のマットのなかから、むくっと起き上がった人物がいた。


「葉村くん……?」


それとも、彼の姿をしたルカだろうか。
どちらかわからないまま、小さく呼びかける。


「佐々木……さん……」


振り向いた彼は片手で頭を押さえて、ぼんやりした様子で私をそう呼んだ。


(本物の葉村くんに戻ってる。彼も助かったんだ……よかった)


ほっと息をついて、でもすぐにもう一人の姿を探す。

ここに雪があるのは、もしかしたらルカのおかげかもしれない。

だって、彼は雪と友達なんだもの。

さっきまでは晴れていたのに、突然曇った空。

そしてこの不自然な雪は、きっとルカが私たちを助けるために……。