* * *



目を開くと、灰色の空が見えた。

俺はどうやら地面に横たわっているらしい。

体は“ルカ”のものに戻っていた。


(二人、は……?)


完全に消えてなくなる前に、二人の無事を確認しなければ。

むくりと体を起こすと、そこは人気のない校舎裏だった。

傍らには不自然に盛り上がった白い塊が。

どうやらその一か所にだけ、集中して雪が集まってくれたみたいだ。

その上に目をやると、まぶたを閉じて倒れているキナコと葉村の姿があった。

ふたりの手首をそっと握ると、ちゃんと脈が感じられた。


(よかった……気を失っているだけだ)


俺の祈りは、空に通じたんだ。

ほっと胸をなでおろすのと同時に、俺の身体がぐらりと傾いた。

苦しくはないが、何者かにどんどん力を吸い取られていくような感覚がして、意識も飛びそうになる。


(もう……“無”になる時間が来たのか? もう少しくらい、キナコと話をしたかっ――)


「……っ」


でも……これでいいんだ。

感傷に浸る暇なんて、ないほうが、きっと。


意識を失う寸前そんなことを思い、ふっと力尽きた俺はその場にばたりと倒れた。