【理久へ
最後まで勝手で、心配と迷惑ばかりかける姉でごめんね。
理久が信じてくれるかどうかわからないけれど、キョウちゃんが亡くなってすぐの頃、何度か私に会いに来てくれたことがあるの。
たぶん、幽霊ってやつだと思う。
私、すごくうれしかったんだけど、幽霊にもいろいろルールがあるらしくて、冬に亡くなったキョウちゃんには、地上に雪がないと会えないんだって。
だから、冬が終わってしまうとキョウちゃんは私の前に現れてくれなくなった。
キョウちゃんは最後の日に、“また来年会いに来るよ”って言っていたけど、私、そんなに待っていられない。
一日も早く彼に会いたくて……毎日、どうやって死のうかってばかり考えてた。
そんな私を見て、理久が心配しているの、わかっていたよ。
あまり声を掛けてこないのは、私のことを気遣っているからだっていうのも。
そのせいで、理久は家にいるのが窮屈だったよね。
私がいつ変な気を起こすとも限らないから、勉強もはかどらない。友達と遊びにも行けない。彼女だって作れない。
理久だっていつか、私にとってのキョウちゃんみたいな、唯一無二の大切な人に出会うはずなのに。
だから……そろそろ、キョウちゃんのところに行くタイミングかなって思ったの。
理久を縛っている私という存在を、消したほうがいいって。
理久は理久の人生を、楽しみながら、歩んでほしい。
それが、姉として、それからたった一人の家族としての、私の願いだから。
優しい理久は、私の自慢の弟です。
天国に行ったらお父さんとお母さん、それにキョウちゃんも一緒に、理久のこといつまでも見守っています。
理久の姉でいられて、幸せでした。
ありがとう。さよなら。 理美】

