一月。

高校二年の冬休みが明けて少し経った頃の、放課後の帰り道。

私は自分の前を歩く男子の丸まった背中を見つめながら、思う。

こんなに寒い雪の中を、上履きのまま帰るのは、どれだけ寂しくて、どれだけ悔しいんだろう、と。

……でも、思うだけ。決して彼に声をかけることはできない。

傘の柄を握りしめ、一定の距離を保ったまま、帰る方向が同じ彼の背中を追いかける。


(意気地なし……)


私はきゅっと唇をかんで、雪で汚れたアスファルトに視線を落とした。

私佐々木菜子(ささきなこ)と、前を歩く彼、葉村理久(はむらりく)くんは同じ高校のクラスメイト。

そして私は、一年のころから彼に片思いをしている。……ううん、していた、かな。

今は、彼を好きだっていう気持ちに蓋をして、鎖でぐるぐる巻きにして、鍵までかけて、絶対に他人にばれないようにしている。


……その理由は、彼がクラスでいじめられているから。