無言だった。

あたしも柊もトシちゃんも、何も言わなかった。

その沈黙は決して重いものではなくて、心地好い沈黙で。


火花はさらに激しく飛び始める。



パチパチ、パチパチ。


パチッ。



「……あ」


ぽとりと落ちた、オレンジ色の火玉。

静かになった花火の先端。


「あ、勝った」


柊の声が聞こえて、ぱっと隣を見るとまだ火花を飛ばしていた。


「負けた……っ!」

「まー、俺が勝つだろうとは思ってたけど」

「うがー! ……って、あ!」

「……あ」


ぽとり。

柊の火玉も、アスファルトの上に落ちた。


二人して、まだオレンジ色のそれを見つめる。


あまりにも呆気ない終わり。


「……これ、捨てよか」

「あー、うん」


水の入ったバケツに燃え尽きた花火を捨てると、ジュッと小さな音がした。


この夏も、こんなふうに終わってしまうんだろうか。


そう思うと寂しくて柊を見つめてみたら、なに、と怪訝そうに柊は首を傾げて。

だからあたしは、何でもない、と笑ってみせた。