リンクの中央に立った巳影くん。


一周ターンをして、ポーズをとる。


流れてきた曲は聞き憶えだけでなく、弾き覚えもある曲だった。


『え、これって…』


少し音質の悪いピアノの音は、間違いなく私が
デモとして録音したものだった。


スマホのアプリで録音したから、時々ノイズが混じる。



『嘘でしょ…』


頬を熱い何かが伝った。



涙でぼやける視界で、必死で巳影くんを見つめる。


きっとこれが最後だ。

彼が滑るところを見ることができるのは。