「おい」
自分でもどす黒く、低く出してることが分かる。
「音羽が嫌がってんだろ。
さっさと汚れた手をはなせ」
「いや、あの……俺は……」
怯えてるのに、そいつは音羽の腕をはなさない。
「……あ?」
俺は鋭くそいつを睨みつける。
尾崎は音羽の腕を振り払って逃げて行きましたと。
「……大丈夫か?」
さっきとは真逆に優しい声音で音羽の目線に合わせるように体勢を低くした。
「あっ、うん、平気……ありがと」
あ。大丈夫じゃないな。
「…………怖かったな」
「今一瞬和樹がヒーローに見えた……。
めっちゃタイミングいいもん」
「腕は? 平気か?」
俺は音羽の腕を触れた。



