ちなみに3大ソナタは月光、悲壮、熱情の3つのこと。どれもベートーベンが作った曲でもあるのだ。
「泉さん!」
すると、後ろから声が聞こえた。
「氷室さん!」
氷室さん……いや、氷室有澄奈(ヒムロ アスナ)さんはお父さんがピアニストで有名なの。
親の七光っていう言葉を聞くけど、氷室さんはそんなのじゃない。
見た人を圧倒させるような、そんなすごいピアノを奏でるの。
同じコンクールに出る時はライバル同士だけど、普段は友達としてよく電話する仲。
「氷室さん、今回は何を弾くんですか?」
「それ今聞くのかしら。あとでのお楽しみってことでいいかしら?」
「ええ、もちろん」
「あっ、そろそろ時間……。和樹、楓達に案内しといて。それじゃあ氷室さん、私達は行きましょう」
和樹と少しだけ話してから、私と氷室さんは控え室に向かった。
こうしてコンクールが幕を開いた。
そして、私の人生が大きく変わるスイッチを押すこととなる。



