和樹くんはいい名前ですねと言った。
和樹くんが家から出て、私は音羽と会うための言葉をいろいろ考えた。
そこから仕事で有給を捕ってサプライズで音羽に会いに行った。
コンクールの情報はオーストリアの留学先の高校に聞いて、はるばる来たんだ。
音羽の姿は前よりはるかに大人に見えて、綺麗になったの方が似合ってた。
音羽がピアノを弾く時は本当に楽しそうで、緊張でガチガチだった子供のころをついつい思い出してしまう。
小さいころ、ラ・カンパネラっていう曲を弾けるようになりたいって何度も私に言って、今その夢を叶えた。
留学させて良かった。
心からそう思えた。
生まれて来てくれてありがとう。
感謝の気持ちが溢れてしまったんだ。
やり直したいけど、音羽が嫌ならもうしょうがない。
時間はまだあるし気長に待つね。
本当に今まで母親らしいことを全然出来なくてごめんなさい。
私は何があっても音羽の味方だからね。
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語り手を音羽に戻ります。



