そして、5月の下旬頃───





今日はピアノコンクール本戦。




「行ってきます」




「…………」



家にお母さんがいるのにもかかわらず、返事はしてくれない。



まぁ、昔からこんな感じだから慣れたけど。




見ての通り、私とお母さんはお世辞にも仲がいいわけではない。



お父さんは小さい頃に病気で他界した。



確か、心筋梗塞で。



お母さんはそのことをまだ立ち直れずにいるみたいなんだ。




気持ちが冷めたまま、家のドアを開くと相変わらずのこと、和樹がいた。