いつもは楓の顔ちら見してにやけるけど、今日はそんな気分じゃなくて。



いなくなった音羽の空いた席をずっと眺めていたんんだ。





音羽のピアノは他の誰よりもなんか魅力的だった。



聴いた人が楽しいって思わせてくれる。



小学校1年の頃、親が全国区のピアノコンクールが近くでやるのを聞いて俺を無理やり連れ出した。



退屈で、寝ちゃいそうだった時にちょうど音羽のピアノを聴いた。



俺は眠気なんて飛んで、音羽をガン見した。



俺とおんなじぐらいちっこいのにめっちゃ速く動いてたんだ。



音羽のピアノ演奏が終わって、俺は無意識で拍手した。



周りの人も母ちゃん達も立ちながら拍手したから俺も周りに合わせて拍手した。



音羽が1番最後の演奏だったから、すぐに結果発表が来た。



音羽が優勝したのを見て、俺は会場を後にした。