「あ、あの……どなたですか?」



「覚えてないの!? 氷室有澄奈よ。お父様が有名だから知ってたんだと思ったわ!」



「は、はあ……」



いきなり名前言われても……って、えっ?



氷室って、もしかして……



「もしかしてじゃなくても、お父様は有名なピアニストよ。私もそこを目指してる」



すごい人じゃん! どうして勝てたんだ?



「えっと、私に何かあるんですか?」



「泉さんが小学校5年から急に出なくなったから気になっちゃって」



あれ? なんでそんなことしってんだろ?



「えっ……どうして知ってるんですか?」



「泉さんの初優勝時、私も会場にいたの。
すごすぎて圧倒されたわ。泉さんを超えるっていう目標が出来た。そんな人が突然やめるんだもの。誰だって驚くわ」



こんなにも言われるなんて思わなかった。



道理で、私のこと知ってたんだ。