小さな約束






「なんであんたが……」



思いがけない人が目の前に現れたから、驚いてしまう。



綾瀬、なんで……




「塾だったんだよ。来年は一応受験生だからな。お前みたいに成績良くないから」



話を聞くとどうやら塾の帰り道。



綾瀬は溜め息混じりにつぶやいた。



「そういう泉さんはなんでここに?」



どうしよう。なんて言おう。


言い訳出来ない。


夜遅い時間で、しかも家には帰りません。


そんで死にたいなんてさすがに言えないんだけど。



私は口をつぐむ。



「泉さんってさ、無愛想だよな」


「……それが?」



「ピアノ昨日だっけ? 弾いてたじゃん!
俺めっちゃ上手くて感動した!
しかもそん時泉さん笑ってんじゃん!
俺びっくりした! お前って笑うと意外に可愛いじゃん!」



可愛い……。


思わず顔を赤くしてうつむく。