「斎藤は考えねえのか? それとも、おまえにはもう自分の道筋が見えてんのか?
なあ、俺もおまえも人を殺してんだ。新撰組に斬り捨て御免の特権があるから赦【ゆる】されるし、御勤め御苦労なんて言われるけどさ、本当は人を斬るのは重罪だぜ。
何で人を殺しちゃ駄目なんだろうとか、何で今の俺たちにだけは人殺しが許されるんだろうとか、何で罪に問われないとわかってるのに人を斬ったら苦しいんだろうとか、
俺、いちいち考えちまうんだよな」
どんぐりまなこにきらきらと真剣な光を宿して、藤堂は斎藤の顔を覗【のぞ】き込んでいる。
斎藤は小さくかぶりを振った。
藤堂の言葉を全部、否定してしまいたい。



