土方は伊東の思想の毛色が判然とした時点で、斎藤に素早く耳打ちした。
「伊東とその周辺を探れ。誰とも敵対せず、誰にも味方せずに、見たこと聞いたことを全て俺に伝えろ。
分裂の危険があるかもしれない。特に平助が危うい」
危ういという言い回しは、近藤や土方の立場から見れば、そういうふうになるのだろう。
あるいはより強烈な表現をすれば、藤堂が自分らを裏切るかもしれないという危機感を、土方は抱いているのだろうか。
斎藤の目には、藤堂は決して危うくは映らない。
むしろ、魚が水を得たように見える。
藤堂は最近よく斎藤をつかまえては、聞いてくれよと、生き生きとした顔で語り出すのだ。



