伊東は、書物に学んだ見識において山南を凌駕し、爽やかな容姿と論調が人を惹き付ける点では武田を大きく突き放している。


近藤が、我々のような武辺者には得難き存在と呼んで伊東を珍重するのは、斎藤にも理解できた。


学識の乏しい自分の代わりに物を考えてくれる秀才がいれば、大船に乗ったような安心感が手に入るのだ。



局内の反応は三つに分かれた。


近藤のように伊東を信奉する者もいれば、口がうまいやつは胡散【うさん】臭いと鼻白む者もおり、あまりにも異質な新参者への戸惑いから沈黙してしまう者もいる。


伊東と同じ北辰一刀流の藤堂は、伊東を信奉した。


近藤の心理と思考を最もよく解する土方は、伊東に鼻白んだ。


戸惑って沈黙する者が一番多く、山南や沖田や永倉といった面々は、伊東とも適度に交流しつつ、変化した人間関係の中で新たな自分の居場所を探すこととなった。